はじめに
北米大陸には最初からアメリカ人が住んでいたわけではありません。
ヨーロッパ人が到着する以前から、多くの先住民がそれぞれの文化や社会を築いていました。
そしてヨーロッパ諸国の進出によって、北米の歴史は大きく動き始めます。
第1章では、アメリカ合衆国誕生前夜の北米を見ていきます。

第1章 北米は誰の土地か
北米にはどのような人々が暮らしていたのか
アメリカの歴史を学ぶとき、多くの人はヨーロッパ人の到来から考え始めます。しかし北米大陸には、それよりはるか以前から多くの人々が暮らしていました。
北米は誰も住んでいない土地ではありませんでした。
ヨーロッパ人が到着する何千年も前から、先住民たちは独自の社会や文化を築いていたのです。
先住民と一言で言っても、一つの民族ではありません。
イロコイ連邦のように複数の部族が協力して政治を行う社会もあれば、大平原で狩猟生活を送る集団も存在しました。
農耕を中心とする地域もあれば、漁業や交易によって発展した地域もありました。
生活様式は地域によって大きく異なります。
北米大陸には言語や文化の異なる数百もの集団が存在していました。
つまり、北米にはすでに人々の暮らしがあり、社会があり、歴史があったのです。
後にヨーロッパ人が「新世界」と呼ぶ土地は、先住民にとっては昔から暮らしてきた故郷でした。
第1章のテーマである「北米は誰の土地か」を考えるうえで、この事実はとても重要です。
ヨーロッパ人が到着する前から、北米には確かに人々の世界が存在していました。
なぜヨーロッパ人は北米へやって来たのか

15世紀から16世紀にかけて、ヨーロッパでは大航海時代が始まりました。
各国は新しい航路や貿易ルートを求めて海へ進出します。
当時のヨーロッパでは香辛料や絹などのアジア産品が高い価値を持っていました。
しかし従来の交易路には多くの危険や制約がありました。
そこで各国は海を使った新しいルートを探し始めます。
その結果、多くの探検家が大西洋を渡るようになりました。
ヨーロッパ諸国が北米に関心を持った理由は一つではありません。
金や銀などの資源を求めた人々もいました。
毛皮や木材などの豊富な資源に期待する商人もいました。
さらに宗教的な自由を求める人々もいました。
代表的な例がイギリスから渡ったピルグリム・ファーザーズです。
イギリス国内で宗教上の問題を抱えていた人々は、新しい土地で自由に信仰したいと考えました。
ヨーロッパ人にとって北米は、大きな可能性を秘めた土地だったのです。
しかしヨーロッパ人の到来は、先住民社会に大きな変化をもたらすことになります。
交易が広がる一方で、土地をめぐる争いも増えていきました。
北米の歴史は新しい時代へ進み始めます。
植民地はどのように作られたのか

ヨーロッパ人が北米へ渡るようになると、各国は現地に植民地を建設し始めました。
特に大きな勢力となったのがイギリスです。
イギリスは北米東海岸を中心に次々と植民地を築いていきました。
後に有名になる13植民地も、この流れの中で成立します。
植民地では農業や貿易が盛んに行われました。
タバコや綿花などの生産は大きな利益を生み出します。
港町では商業活動も活発になりました。
ヨーロッパとの貿易によって植民地経済は成長していきます。
一方で、植民地は完全に独立した存在ではありませんでした。
植民地は本国であるイギリスの支配下にありました。
政治や法律の重要な決定はイギリスによって行われます。
植民地の住民はイギリス国王の臣民でした。
しかし距離が離れていたため、植民地の人々は次第に独自の考え方や社会を育てていきます。
後の独立運動につながる意識は、この時代から少しずつ形成されていました。
植民地は単なる移住地ではなく、新しい社会の実験場でもあったのです。
なぜイギリスとフランスは争ったのか

北米は先住民だけでなく、ヨーロッパ諸国にとっても魅力的な土地でした。
そのため勢力争いが起こります。
特に激しく対立したのがイギリスとフランスでした。
両国は北米各地で領土や交易権をめぐって競争します。
毛皮交易は大きな利益を生み出しました。
広大な土地も魅力的でした。
さらに先住民との同盟関係も重要でした。
それぞれの国は自国の勢力を拡大しようとします。
こうした対立はやがて大規模な戦争へ発展しました。
それがフレンチ=インディアン戦争です。
この戦争は北米におけるイギリスとフランスの主導権争いでした。
多くの先住民部族もそれぞれの陣営に加わりました。
長い戦いの結果、勝利したのはイギリスでした。
フランスは北米での大きな領土を失います。
イギリスは北米最大の勢力となりました。
第1章の終盤で学んだ内容は、その後のアメリカ史に大きな影響を与えます。
フレンチ=インディアン戦争は何を変えたのか
フレンチ=インディアン戦争によってイギリスは北米の主導権を手に入れました。
しかし勝利には大きな代償がありました。
戦争には莫大な費用がかかったのです。
イギリス政府は深刻な財政問題を抱えることになります。
そこでイギリスは考えました。
北米植民地の防衛にも多くの費用を使ったのだから、植民地側にも負担してもらうべきではないか。
こうして植民地への課税が強化されていきます。
当時のイギリスにとっては合理的な判断でした。
しかし植民地の人々は強く反発します。
植民地にはイギリス議会の代表がいませんでした。
それにもかかわらず税金だけを課されることに不満を持ったのです。
この対立は後に大きな政治問題へ発展します。
そして独立戦争へとつながっていきます。
第1章はアメリカ建国の物語の始まりにすぎません。
先住民社会から始まった北米の歴史は、次第に「誰が決めるのか」という新しい問題へ進んでいきます。
第1章まとめ

第1章では、アメリカ合衆国が誕生する前の北米を見てきました。
北米にはもともと多くの先住民が暮らしていました。
そこへヨーロッパ人が到来し、植民地建設が始まります。
やがてイギリスとフランスは北米の支配権をめぐって争いました。
フレンチ=インディアン戦争の結果、イギリスが勝利します。
しかし戦争で増えた借金は植民地への課税につながりました。
この課税問題が後の独立運動の出発点になります。
北米は誰の土地なのか。
第1章では、その問いを通じてアメリカ誕生前夜の歴史を学びました。
次章では「誰が決めるのか」という新たな問いのもと、アメリカ独立への道をたどっていきます。

